ディスプレイやPDFで特色再現できるなんて!
(2010年9月10日 プロファイルの保存と設定方法を、よりやりやすい方法に書き直しました)
DTPデザイナーの永遠の悩み、2色印刷。
印刷のプロが相手なら、C+M版のプリントアウトと色チップで話ができるけど、クライアントに見せる時は特色再現したカラープリントを作成する必要があります。
また最近は、印刷物制作完了後に「Webに載せるので、特色再現でPDFが欲しい」と言われて、途方に暮れることも多いと思います。
「PDFなんて簡単にできるでしょ?」って営業に言われて、キレたデザイナーさんもいるでしょう・・・
2色印刷シミュレーションができるプリンタがあれば、画像にしてAcrobatのOCR機能で検索可能なPDFにするという手もありますが、あまり良い方法とは言えませんよね。
でも実は、割と簡単に特色を再現する方法があるんです。
この方法なら、出力で特色再現するだけでなく、ディスプレイ表示で特色再現ができるので、デザインの際にとてもイメージがつかみやすくなります。
それは、特色再現のカラー設定を作成して適用するという、言われてみれば当たり前の方法です。
カラー設定を作るなんて難しいのでは? なんて思っているデザイナーさんも多いのではないかと思いますが(私も昨日までそう思っていました)、画面表示のための設定を作るだけなら簡単なので、今すぐやってみましょう!
使用アプリケーションは、Adobe CS4 です。
(もうちょっと前のバージョンでも大丈夫だと思います)
まずはデータを作りましょう
今回は、よくあるスーパーのチラシを例にとります。
データは、C版とM版の2版で作成してあります。
(データの色のまま)
これを、C版を緑色、M版を朱色で印刷します。
(特色で印刷)
データ制作にはIllustratorを使いました。
配置画像はPhotoshopで2色に加工してあります。
(CMYKをCMに振り分けるのは熟練のプロの技が必要でしたが、今回の方法を応用すれば、そこまでの熟練者でなくても、そこそこできるようになるかも)
使用する特色を調べましょう
Photoshopでカラー選択ボックスをクリックして、カラーピッカーを表示させます。
次に、特色の掛け合わせをCMYK値で入力し、その時に表示されるLab値をメモしておきます。
今回は、C版は、C100+Y100 の色で印刷するので、Lab値は、L:52, a:-82, b:29、
M版は、M100+Y100 の色で印刷するので、Lab値は、 L:49, a:75, b:59 となります。
なお、DICなどのカラーライブラリは、色を選ぶとLab値が表示されます。
カラープロファイルを作りましょう
Photoshopの「編集」-「カラー設定」のダイアログを開き、作業用スペースのCMYKで「カスタムCMYK」を選択します。
「カスタムCMYK」ダイアログが開くので、印刷インキ設定のインキの色特性で「カスタム」を選択します。
。
「インキの色特性」ダイアログが開くので、下部のチェックボックスにチェックし、CとMのところに、先ほどメモしたLab値をそれぞれ入力します。
使用しない版は、Wの値を入れておきます。
OKをクリックすると、「カスタムCMYK」ダイアログに戻ります。
ここで、保存名にわかりやすい名前を付けます。
今回は「チラシ」としました。
色調変換に使用しないのであれば他の部分は特に変更する必要はありませんが、いちおう墨版生成を「なし」にしておきます。
。
OKをクリックすると、「カラー設定」ダイアログに戻ります。
ここで再度、作業用スペースのCMYKをクリックし、今度は「CMYKプロファイルとして保存」を選択します。
保存先は、業務のことを考えると、物件ごとのフォルダに保存しておいたほうがいいと思います。
今回は「チラシ.icc」という名前を付けて保存しておきます。
データに適用してみましょう
先ほど保存したカラープロファイルは、インストールしないと、プロファイルとして使用できません。
Windowsの場合は、プロファイルを右クリックして、「プロファイルのインストール」でインストールします。
または、「WINDOWS¥system32¥spool¥drivers¥color」フォルダーにプロファイルをコピーします。
MacOSXの場合は、「/ユーザー/[ユーザー名]/ライブラリ/ColorSync/Profiles」フォルダーにプロファイルをコピーします。
※カラープロファイルをインストールした後は、Adobeのアプリケーションを再起動しないと認識してくれません。
では、Illustratorで、チラシデータを開きましょう。
データを開いたら、「編集」-「プロファイルの指定」を開きます。
プロファイルをクリックすると、先ほどインストールしたプロファイルが選べるようになっていますので、「チラシ」を選択します。
。
すると・・・どうですか? ちゃんと画面上のデータが特色再現されましたよね?
2色で出来ている画像も特色になっているし、色の掛け合わせも再現されていると思います。
データ自体は変更されていないので、緑ベタの部分の色はC100%のみ、Y成分はありません。
プロファイルの指定で元のプロファイルを選択すれば、C+M版の表示に戻ります。
印刷時は、印刷ダイアログの出力タブにプロファイルを選ぶところがありますので、「チラシ」プロファイルを使用すれば特色再現で印刷されます。
データを保存するときは、「ICCプロファイルを埋め込み」にチェックして保存します。
このデータを次に開くときは、「埋め込まれたプロファイルの不一致」ダイアログが開きますので、「埋め込みプロファイルを使用する」を選択すれば特色再現で開きます。
プロファイルを破棄、あるいは作業用プロファイルに変換を選択すれば、C+M版の表示で開きます。
特色再現PDFを作って見ましょう
では、いよいよWeb用PDFに書き出してみます。
「ファイル」-「別名で保存」から、ファイルの種類でPDFを選択します。
ダイアログが開いたら、プリセットで「最小ファイルサイズ」を選択します。
「出力」タブで「カラー」を下記のように設定して、PDFを保存します。
この設定で作成したPDFはカラーが「AdobeRGB」に変換されますので、シミュレーションではなく、色自体が特色の色になっている、普通のRGBカラーのPDFになっています。
出力先に、カラープロファイル「チラシ」を選択してもうまくいきそうに思えますが、私が試したところ、なんだか変な色になってしまいました。
クライアントが、カラープロファイルに対応しているような新しいビューワーで見てくれるとも限らないので、ここは色を変換してしまったほうが良いと思います。
カラー変換をしないと、C+M版のPDFが作成されます。
Acrobatがあれば、「ツール」-「印刷工程」-「出力プレビュー」でカラープロファイルを適用すると、シミュレーションすることができます。
今回はIllustratorで説明しましたが、InDesignなどでも同じ手順で特色再現ができます。
どちらかというと、InDesignで使うことのほうが多いんじゃないでしょうか。
ここで示したプロファイル作成方法は、印刷や画像変換などに用いるには十分ではありませんが、特色再現したものを画面で見たいというニーズには、十分対応できるものだと思います。
ちなみに、Illustrator5.5 とかでは、この方法は使えません。
新しいバージョンのほうが、アピアランスとかスタイルとか使えて断然便利なんだから、早くバージョンアップしてくださいね。
※本記事の作成には、下記記事を参考にさせていただきました。ありがとうございます。
プロファイル作って2色印刷
http://piyopiyoedit.blog93.fc2.com/blog-entry-53.html
はじめまして。nyoboと申します。
さくらぎけいさんのサイト(https://www.cherrypieweb.com/weblog/technical/20110902010014.php)の情報のおかげで大変幸せな経験をすることができました。深く感謝申し上げます。
しかも、ぴよさんのサイト情報によると、元ネタが2003年だということに愕然といたしました(いかに勉強不足か)。
一言御礼を言いたくて書き込ませていただきました。
本当にありがとうございました。
nyoboさん
お役に立てて何よりです。
DTPって、昔ながらのツールややり方でも、気合で何とか出来てしまうので、「新しいやり方探すより、1晩徹夜してやっちゃえ!」っていう意識があるような気がします。
私はオペレータではなく中間管理職だったので、どうやって社員の残業を減らすかを考えた結果、ぴよさんのサイトにたどりついたというわけです。
こういうのを教えあって、みんなで幸せになってくれたらと思っています(笑)
印刷所やデザイナーから受け取っていた書籍の入稿PDFから展示パネルやPOPをつくったりするのに使わせていただいています。ありがとうございました。
もしご存じでしたら、以下の方法をご教示いただけますとたいへんありがたいです。
カラープロファイルを設定して2色を再現したAcrobat上からそのままRGB化したPDFにはできないのでしょうか。
今度、電子書籍化にあたってもこの方法で行こうとおもったのですが、制作環境がバラバラなので、Illustratorで開くと書体化けを起こしてしまい、弱っています。
sudahatoさん、コメントありがとうございます。
Acrobatでは、「ツール」-「印刷工程」-「色を置換」メニューで色が置換できます。
出力インデントの「カラーを出力インデントに変換」にチェックして、作成したプロファイルを指定してください。
これでまず見た目が変わります。
この段階ではデータ的には元の色のままなので、次に、「印刷工程」-「プリフライト」で、「PDFフィックスアップ」-「sRGBに変換」を行います。
すると、見た目の色でRGBに変換されたPDFになります。
出来たPDFをイラストレータで開いてみると、ちゃんとカラーがRGBになっていたので問題ないと思います。
「AdobeRGB」とかにしたい場合は、フィックスアップの内容を編集してください。
他にもっといいやり方があるかも知れませんが、とりあえずはこんなところかなーと思います。
さくらぎけい様
早速のご返答ありがとうございます。
できました!
そこかなー、とアタリをつけて試行していたのですが、フィックスアップするとどの設定でもM版そのままの色に戻ってしまっていました。
バージョン問題だったようです。
× Mac OS 10.5.8 AcrobatPro9.5.2
◯ Windows7 AcrobatPro11.0.0(試用版)
最後のCM画像を特色2色で画像を作る部分ですが、Photoshopの2.5からできますよ。インストールが必要で不安定な自作のプロファイルなんか使いません。ダブルトーンでも、チャンネルでも、例ーやマスクでも、塗りでもできますよ。
早くバージョンアップしろのくだりは、Illustrator5.5職人を煽りすぎです。諸事情でそういう環境になっていたのに、失礼です。
大変失礼いたしました。
この記事は、職人ではないデザイナーをターゲットにしていますので、職人の方は職人の手になじんだツールを使っていただければよいと思います。
また記事の最後に書いたように、実際の印刷などには十分でないことは承知しています。
そもそも「ディスプレイで特色再現する」のが目的の記事なのです。
なお、諸事象がある方は仕方がないですが、もう印刷物もCMYKよりRGBで運用する時代ですし、WebとDTPの連携が必須なので Illustratoe 5.5 というのは無しかなと思っています。
(ちなみに私は、Photoshop 2.5から、Illustrator 5.5から実務で使っています)