第34回リクリセミナー「Webデザイントレンド in 大阪 2018」に参加してきました

2018年1月27日に大阪で行われた、第34回リクリセミナー「Webデザイントレンド in 大阪 2018」に参加してきました。
セミナー前日から私の住んでいる京都府北部は大雪に見舞われ、私の大阪入りは予定よりも1時間半も遅れてしまいました。
実はセミナーの前に行きたいところがあったので1時間早く出発していたのですが、それが幸いして、昼食抜きでどうにかセミナー開始時刻に会場に入ることができました。

ウェブデザインとセルフブランディング 2018

最初のセッションは、矢野りんさんと松田直樹さんによるマインドセッション「ウェブデザインとセルフブランディング 2018」です。
Web制作は自動化や標準化が進み、AI(人工知能)もいよいよ実用的なところに入ってきて、近い将来Web制作がAIにとってかわられるなんて話も出てきているなか、『あなたに仕事をお願いしたい』と言われるようになるためには「セルフブランディング」が必要です。

・・・って頭ではなんとなくわかっていても、
「セルフブランディング」って何をすればいいの?
ていうか、そもそも「セルフブランディング」って何?
と思っていました。

セルフブランディングっていうのは、「自分のキャラクター」。
つまり『○○といえば、川井さんだよね』と言われるようになること。
それは、「想起率」と言われるもので、ターゲットが特定のブランドを選択肢として思い起こせる割合のことだそうなのですが、

じゃあ、それをどうやって高めればいいのでしょうか?

たとえばSNSで何かを記事をシェアするとき、単にシェアするのか? 一言コメントをつけてシェアするのか?
コメントをつけると、そこに自分の「感性」が乗ります。
「感性」が乗ると、それを見たユーザーとの間に「体験」と「コミュニケーション」が生まれ、想起率につながるのです。

自分自身をコンテンツとして「自分の感性」をアウトプットしていけば、その「感性」が誰かに想起されるようになるということなんですよね。
これを続けていけば、いわゆる「キャラが立つ」ようになり、それが「セルフブランディング」ということになるってことです。

振り返って、私ってキャラが立っているのかと考えてみると・・・
「インコの人」「黒柴犬の人」「しいたけ占いの人」っていうキャラはできているんじゃないかと思うのですが、これでいいんでしょうか?
「インコ」や「黒柴」は単なる雑談のネタにしか結びついていないし、「しいたけ占い」はLT芸人としてのキャラにしか結びついていないような気もします。
フリーランスでWeb制作をしているのであれば、やっぱり「Web制作」に関することでの想起率を高めたいと思うのですが、残念ながらそこには至っていないということなのでしょうね。

Dialog Flow+kintoneで作る LINE bot入門

CPIさんの「CPI20周年サンクスキャラバンin大阪のお知らせ」をはさんで、次のセッションはたにぐちまことさんのkintoneセッションです。
LINE bot でアンケートを取って、kintoneでデータ収集するというなかなか面白い話でした。

私はWordBench京都で2度ほどkintone+WordPress連携セッションを聞いていて、kintoneの開発者アカウントも持っているんですが、なかなか試せていません。
せっかくなのでこのセッションを生かして、何かクライアントにいい提案ができないかなと考えています。

ただ・・・今のところあまりいいアイデアはありません。
頭の片隅に置いて、何かあったときに思い出せるようにしておきたいと思います。

フォントおじさん2018

続いては、ソフトバンク・テクノロジーの関口浩之によるフォントセッション。
関口さんのWebフォントに関するセッションは、2015年の「大阪DTPの勉強部屋」で一度聴いたことがあるのですが、その時から急激に進化してきているWebフォントの現在と未来を知ることができたセッションでした。

(その時の記事はこちら)

https://www.cherrypieweb.com/wp/weblog/technical/20150902225814.php#DTPWeb

「2017年のフォント周りで気になった話題」ということでまず出てきたのが、マツコ・デラックスの人気番組「マツコの知らない世界」で「フォントの世界」が放送されたこと。
これ、私も見てました。
フォントというものの存在が以前に比べて一般的に認知されつつあるということなのでしょうね。

フォントについて私も(そして他のデザイナーさんも)意識しているのは「フォントの適材適所」ということだと思います。
例えば病院名が古印体だったら怖いし、装飾が多いフォントだったら美容整形かと思うし、ポップなフォントだったら技術が大丈夫かなと思いますよね。
(ちなみに病院名でよく使われているのは「丸ゴシック体」です)

人間の脳は0.1秒で、それが何であるか? 好きか嫌いか? を決めているんだそうです。
その判断に大きく関わるのが見た目、つまりフォントなんですよね。

この話って、矢野さん・松田さんのセッションで話されていた「感性」にもつながるのでは? と思いました。
同じコンテンツだとしても、そこで使われるフォントによって「感性」が伝わります。
同じ明朝体でもフォントによって表情が違いますから、そこにこだわるのも「セルフブランディング」ですよね。

ただ、これまではWebではデバイスによってフォントが違うのでフォントにこだわるのは無理で、見出しなどは画像で作るしかない状況でした。
CMSのように日々コンテンツが更新されるシステムでは使いづらく、画像はファイルサイズやSEO対策などの問題があるため、プログラマからは『フォントにこだわるのはWebのことがわかっていないデザイナーのエゴ』だと言われることも・・・

でも現在は技術が進み、「日本語Webフォント」がとても身近な存在になってきています。
従来からの課題であった「日本語Webフォントは表示が遅い」問題は、サブセット取得技術の進歩で相当に改善されています。
私もいくつかのCMS案件でWebフォントを使用しているのですが、表示の遅延はほとんど気にならないレベルです。
それよりもWebフォントによる演出の効果が非常に高いことを実感しています。

「フォントは情報を的確に伝えるための重要なUI/UX」というまとめに納得です。

私はもともとDTP出身ということもあり、フォントにはそれなりの思い入れがあります。
WordBench京都・神戸などのWordPress関連の勉強会でフォントに関することを話したり、このブログでフォントについての投稿をしていますので記事のリンクを張っておきます。
特に「Webの文字組版の問題はかつてDTPが通ってきた道なのかも」という記事の最後に書いたプログラマへの期待が現実のものになってきているのは、とても嬉しいです。
プログラマはデザイナーの敵ではなく、強い味方なのです!

https://www.cherrypieweb.com/wp/weblog/diary/20140325125217.php

https://www.cherrypieweb.com/wp/weblog/technical/20140831012408.php

https://www.cherrypieweb.com/wp/weblog/technical/20160726122243.php

初春! 春だ一番 Webデザイントレンド祭り スペシャル

最後はセミナータイトルにもなっている、Webデザイントレンドのセッションです。

原一浩さん、矢野りんさん、坂本邦夫さん、深沢幸治郎さんの4人の掛け合いで、海外Webデザイントレンド・日本のグローバル企業・上場企業・自治体という分け方で、それぞれのトレンドについてお話されました。
チェックされているサイトの数は合計5,500サイト! 手分けされているとはいえ、これは凄いです。

2017年から2018年のデザインキーワードは「とにかく動く」なのだそうです。

海外Webデザイントレンド

海外での注目は、この3つ。

  • ピクニックシート
  • ロシアンデザイン・ブラジリアンデザイン
  • WebVR

ピクニックシートと言うのは一般的に使われているものではなく、今回のセッション用に編み出された言葉で、敷物を敷いていくようにコンテンツが現れる演出のことです。
目線を止める効果があり、実装が比較的簡単なので使われているのではないかとのことで、これは日本でも取り入れやすそうだなと思います。

ロシアンデザインとブラジリアンデザインは確かに素敵で面白いのですが、日本のサイトに合うかどうか難しいところだと感じました。
そもそも私のセンスでは、良し悪しの判断も難しいです・・・

WebVRは制作ツール次第だと思います。
Adobeからもツールが出てきていますし、デザイナーが使いだしたら一気に広がるのではないでしょうか。

グローバル企業編

グローバル企業では「大きいほうのレスポンシブ」という言葉が出てきました。
「レスポンシブデザイン」と言えば、幅の狭いスマートフォン対応という印象が強いのですが、ここに来て「横幅の広いディスプレイ対応」で、とにかく画面いっぱいに巨大な文字でダイナミックな構図というデザインも増えてきています。
固定横幅は1600px基準で、2000px超で画面いっぱいでも違和感がないとか、単位がvwとか。
こういったデザインにする場合の問題点は、やはり「ファイルサイズ」なんじゃないでしょうか?
日本のサイトで取り入れるならば、巨大な文字を使うためにWebフォントが必須になってきますね。

次に出てきたのは「ソーシャルメディアをサイトに取り入れるためのデザイン」です。
SNSのタイムラインをただ表示するのではなく、サイトのコンテンツの一つとして取り入れているのです。
私は従来、公式サイトの内容をSNSでシェアするとか、SNSで顧客対応をするとか、公式サイトが主、SNSは従として運用すると考えていたのですが、SNSを公式サイトのコンテンツとして取り入れるというのはデザインとしては面白いものの、運用が難しくなりそうだと感じました。

上場企業編

企業は保守的、自治体は試行的という傾向があるそうなのですが、地方銀行は試行的なリニューアルを行っているところが増えているそうです。

ここで出てきた言葉が「エモコピ」
大きなメインイメージと気持ち的なことを言うシンプルなコピーの組み合わせです。
また、外向きのメッセージではなく、内向きのメッセージとなっていることもあります。
これは企業名が知られているからこそできることで、下手をすると訳が分からなくなるのですが、ハマったら効果抜群。
これも最初のセッションで言われていた「感性を乗せる」というところにつながってくると思います。

また、横一線のグローバルメニューから、サイドバーへの回帰が見られます。
これは私もWebデザインの際に感じていたことなのですが、レスポンシブデザインにするときにグローバルメニューの処理は意外に面倒です。
幅が限られているために設計段階からよく考えておく必要もあります。
サイドバーであれば、スマートフォンの時は横からスライドする形にすれば違和感がないですし、後から内容が変化しても対応が簡単です。
このあたりはさすがに上場企業、流行に左右されずによく考えているなと思いました。

自治体編

自治体は試行的(挑戦的)だという話にはちょっとビックリなのですが、地方創生と盛んに言われ始めてから、地方の自治体は個性をどんどんアピールし始めていて、それがWebサイトにも表れてきていると考えると当然のことなのかもしれません。

上場企業では「エモコピ」でしたが、自治体(特に知名度の低い自治体)では逆に、端的にその地方を表現しインパクトのある外向きのメッセージを発していることが特徴です。
町の特産や歴史を端的に表したものから、町村名をもじったコピーや、情感に訴えるものなど「ブランディング」に腐心していることがよく伝わってきます。
他にも、インフォグラフィックで我が町のNo.1をアピールしたり、特産品の絵柄をサイトのテクスチャに使ったり、様々なアイデアがあるんですね。
こういうところに必死になれる地方が生き残っていけるのかもしれません。
私も注目していきたいと思います。

登壇者の方々の「目」

各カテゴリーのトレンドとは別に、登壇者の方々が注目されている「○○の目」というコーナーも興味深かったです。

坂本さんの目「言いたいことは短く、大きな字で」

情報過多の時代、素早く情報を取捨選択していく必要がある時代に淘汰されないためには必要になってくるものです。
画像や動画もそうですが、やはりフォントの力も必要なんじゃないかと思います。

矢野さんの目「人間の手の力」

Webサイトが目指しているのは「時空を超えた対話」。
AIスピーカーはスピーカーを売りたいのではなくユーザーが目的を達成するための「文脈」を獲得したいのであって、そこに必要なのはガチの接客力、視覚や聴覚に訴える力。
技術が進めば進むほど、人間っぽいものが差別化の要因になってくるんですね。

深沢さんの目「つむごう、僕らのプロジェクトX」

2017年は上場企業が一斉にストーリーを語りだした年。
ストーリードリブンなサイト制作で必要な力は「行動力、取材力、説得力」。
そして、「誰に何を伝えるか」が重要なのは、ここでも変わらないということです。

まとめ

最後にそれぞれの方がまとめをされていましたが、私はちょっと強引にまとめすぎていると感じました。
ただ、誰もが「ブランディング」について強く意識していて、それがあらゆる形で表れているのだろうと思います。

グローバル企業、上場企業、自治体それぞれ、ターゲットや表現したいものが違う中で考えて試行錯誤していく中で、それぞれのトレンドが見えてくるというのはとても面白かったです。
そして、トレンドがこうだからそれを取り入れたほうがいいということではなくて、それぞれが真剣に考えて作った結果トレンドが生まれているというふうに考えたほうがいいのかなと思いました。

今回は最初に行われた「マインドセットセッション」がとても重要だったと感じています。
後のセッションの話がすべて、マインドセットセッションで語られた「セルフブランディング」に繋がっているなと思いました。


セミナー終了後、場所を移してアフターパーティーが行われました。
私は終電の関係で最後までいられなかったのですが、登壇者の原さんとフォントおじさんこと関口さんと少しお話しする時間を持つことができました。

リクリセミナーでは、とても濃い時間を過ごすことができました。
見たこと聴いたこと、そして話をしたことを、さっそく今日から制作に生かしていきたいと思っています。

来年のトレンドはどう変わっているんでしょうね?
そしてそれが、今年の制作で私が感じたものと合っているのか? それとも違っているのか?

とても楽しみです。

この記事を書いた人

川井 昌彦
川井 昌彦
FAシステムメーカー、国内最大手印刷会社製版部、印刷・ウェブ制作会社を経て、家庭の事情で実家に帰省して独立
現在はフリーランスと制作会社シニアディレクターのマルチワーク
ウェブ制作のほぼ全般を見渡せるディレクター業務が主だが、デザイン・コーディングも好き

1997年ブログ開設
WordPressコミュニティには2011年から参加
WordCamp Kansai 2016 セッションスピーカー
WordCamp Tokyo 2023 パネルディスカッションパネラー
WordBench京都、WordBench神戸、WordPress Meetup八王子など登壇多数

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