リニューアルの落とし穴。そのサーバーにはWordPressが入れられません

この記事は、WP ZoomUP Advent Calendar 2021 の4日目の記事です。

昨年から今年にかけて、コロナ禍で対面の営業が難しくなり、企業のホームページをリニューアルして集客ができるウェブサイトにしようという動きが高まりました。
助成金が多く出たこともあり、ホームページビルダーで作ったようなサイトをWordPressで作り直して情報を発信できるようにしたいという案件がとても多かったのですが、どういうわけかことごとく「WordPressでサイト構築する以前の問題」にはまってしまいました。

この記事では、リニューアル時によくわからないからと見落とされがちなドメインとサーバーについて、実際にあった事例を紹介しながら書いていきたいと思います。

PHPのバージョンを上げる予定はありません・・・?

小規模の企業では、業務システムを納入・管理している会社がオプションでウェブサイト制作を請け負っていることがよくあります。
今回のお客様は、管理会社に業務システムを含めたサーバー周りを丸投げしていました。
そのため、自社のウェブサイトがどのような仕組みで公開されているのかまったくご存じないようでした。
社内のパソコンのメール設定もその管理会社にお願いしているそうなのです。

管理会社のウェブサイトを見てみるとホスティングサービス紹介のページがあり「WordPressがコントロールパネルから簡単インストール可能」と書いてあります。
詳細仕様は書いてありませんでしたがWordPressが動くのなら安心と思ってお請けしたところ、いざ制作を始めようとして衝撃の事実が発覚します。

なんと、簡単インストールできるWordPressのバージョンが4.0 なのです。
そして、PHPのバージョンは5.3

お客様に聞いたところでちんぷんかんぷんなので、管理会社と直接やり取りをしました。
そこで担当者から得た回答がまた衝撃・・・

ご契約の現行プランではPHPのバージョンアップの予定はありません。
上位プランはPHP7となっていますので、移行していただくことになります。
ただし上位プランも現在のところ継続してバージョンアップする予定はありません。
WordPressを推奨環境で動かしたいのであれば、別のサーバーを使われたほうがよいのではないでしょうか?

上位プランは、月額料金は最近のレンタルサーバーのビジネスプラン並みなのに、仕様はライトプラン以下。
SSLオプションも当然有料です。

この管理会社はあくまで業務システムの会社なので、ウェブサイトについては自社で契約していただかなくても良いという考えなのかもしれません。

仕方が無いので新規に別のレンタルサーバーを契約することになりました。
もちろん私が契約代行を行うしかありません。
また、ドメイン管理・メールサーバー管理もこの管理会社が行っているので、DNS設定などもすべて私が調べて管理会社に指示を行いました。
なんと、DNS設定変更は書面で依頼書を出してもらう必要があるとのことで、『令和の時代にどうなってんだ?』と思った案件でした。

さくらインターネットだからと安心していたのに・・・

コーポレートサイトがあるにもかかわらず、ブログを別の無料ブログサービスで行っていたお客様から、自社サイトでブログ発信ができるようにしたいとの依頼を受けました。
その際、年間費用が高いので安くならないかとのご相談も受けました。
現在契約しているのはさくらインターネット。おそらく複数契約があって高くなっているのだろうと思い、プラン変更の代行作業も含めてお請けしました。

そしていざ、ログイン情報をいただいて調べてみたら・・・

レンタルサーバー契約ではなく、専用サーバー契約でした。

コントロールパネルを見ても「電源ON」とか「ロードバランサ―」とかのボタンが並んでいて、私の知っているさくらインターネットのコントロールパネルとは全然違います。

再度お客様に聞いてみたところ、環境構築した人とはもう連絡が取れないとのことでサーバー構成はまったく不明。
FTPでのアクセス方法すらわかりません。
サーバー管理にはOSレベルの知識が必要で、私の技術レベルでは完全にお手上げでした。

ウェブサイトとメールしか利用しておられませんので、専用サーバー契約は明らかなオーバースペックです。
そこで、新たにさくらインターネットのレンタルサーバー契約を行い、移転を行いました。
なお、レンタルサーバーのプラン変更ではなく専用サーバーからの移転だと、さくらインターネットのサポートでも「サポートは難しい」そうです。

お名前.com と ロリポップって同じ会社なんでしょ?

ドメイン管理とサーバー管理が同じ会社だけど別サービスということが良くあります。
たいていは同じ名前がついていて互いに連携しているのですが、GMOはドメイン管理やサーバー管理のサービスが複数あり、連携が少しわかりづらくなっています。

今回のお客様は、コーポレートサイトを某ブログサービスにて公開しており、独自ドメインをお名前.comでとってDNS設定でブログサービスに接続されていました。
その後、別ブランド(別ドメイン)でWordPressのサイトを作成し、ドメイン:お名前.com、サーバー:ロリポップという構成にしておられました。
ここに、さらにコーポレートサイトのブランドで新しくECサイトを作りたいというのがご要望です。
WordPressに慣れているので、WooCommerceでの構築をしたいとのことでした。

私は、コーポレートサイトのドメインのサブドメインを設定し、ロリポップに追加でサイトを作成して割り当てればよいと考えました。
この構成なら、新たなドメイン契約もサーバー契約も不要だからです。

  1. コーポレートサイト
    • ドメイン:お名前.com(aaaa.com)
    • ネームサーバー:お名前.com、Aレコード → ブログサービス
    • 某ブログサービスにて運用
  2. 別ブランドサイト
    • ドメイン:お名前.com(bbbb.com)
    • ネームサーバー:ロリポップ
    • ロリポップにてWordPressをインストールして運用
  3. ★新ECサイト
    • ドメイン:コーポレートサイトのサブドメイン(sub.aaaa.com)
    • ネームサーバー:コーポレートサイトのネームサーバー、Aレコード → ロリポップ
    • ロリポップにてWordPressをインストールして運用

しかし、3. 新ECサイト はこの構成にはできないことが判明します。
ロリポップはIPアドレスを公開しておらず、他社DNSのAレコードを使ってロリポップに向けることができないのです。

ロリポップのサポートページによれば、3. 新ECサイト の構成を実現するためには、ネームサーバーを「ムームードメイン」にする必要があります
ムームードメインはロリポップと同じGMOペパポ株式会社のサービスですので、サブドメインをIPアドレスではなく「ロリポップにする」という設定ができるのですが、当然ながらムームードメインの契約が必要になります。

・・・でも、ちょっと待ってください。

お名前.com のサイトにもGMOのロゴがあります。
同じGMOなのに、ムームードメインはOKで、お名前.comはダメってどういうことなのでしょう?

調べてみたら、お名前.com は、GMOインターネット株式会社のサービスでした。
ムームードメインとロリポップは GMOペパポ株式会社。
GMOグループだけど、別会社なんですね。

仕方が無いので、お名前.com からムームードメインへ移管を行いました。
ドメインは年契約なので、半年以上の契約期間が無駄になってしまいました。

サーバー・ドメインは落とし穴がいっぱい

以上はすべて、2021年に私が遭遇した実話です。(細かいところは若干変えています)
自分ではそこそこ経験を積んできていると思っていたため、こんなに一気に落とし穴にはまってしまってショックでした。

制作を請け負う方は、お客様が言われることを鵜呑みにせず、見積もり前にしっかりと状況確認を行いましょう。
場合によっては自社で処理することができず、他社に依頼して処理してもらうことになります。
その場合の費用は専門性が高いために非常に高額になることがあります。それだけで利益が吹っ飛んでしまうこともあるでしょう。

ウェブサイトのリニューアルをお考えの企業様は、現在のウェブサイトやメール・ドメインについて自社で管理されているかどうか、今一度ご確認ください。
自社で管理されていない場合は、上記のような調査を行うための費用が結構な高額で見積もりに入ってくることにご理解いただければと思います。

逆に言えば、そういった見積もり項目を入れてくる業者は経験豊富だと言えるかもしれませんね。

この記事を書いた人

川井 昌彦
川井 昌彦
FAシステムメーカー、国内最大手印刷会社製版部、印刷・ウェブ制作会社を経て、家庭の事情で実家に帰省して独立
現在はフリーランスと制作会社シニアディレクターのマルチワーク
ウェブ制作のほぼ全般を見渡せるディレクター業務が主だが、デザイン・コーディングも好き

1997年ブログ開設
WordPressコミュニティには2011年から参加
WordCamp Kansai 2016 セッションスピーカー
WordCamp Tokyo 2023 パネルディスカッションパネラー
WordBench京都、WordBench神戸、WordPress Meetup八王子など登壇多数

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